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デジタル時代の付き合い方 ― アプリ、画像、ポルノ、そしてAI

⏱ 読む時間の目安:約7分

出会いも、やり取りも、楽しみ方も、画面の中で終わることが増えました。デジタルの道具は、上手に使えば世界を広げてくれます。けれども、使い方をまちがえると、自分や誰かを深く傷つけることがあります。この回では、マッチングアプリの安全、性的な画像のやり取り、ポルノとの付き合い方、AIの話し相手、AIで作られた性的な画像について取り上げます。研究で分かっていることと、まだ分かっていないことを分けて整理します。

マッチングアプリを安全に使う

こども家庭庁が2024年7月に行った調査では、ここ5年ほどの間に結婚した人の25.1%が、配偶者と出会ったきっかけに、ネットで出会いを探すアプリ(マッチングアプリ)を挙げました(こども家庭庁, 2024)。アプリは、今では当たり前の出会いの場の一つです。

同時に、トラブルもあります。米国の2022年の調査があります。アプリを使ったことがある50歳未満の女性の56%が、望んでいない性的なメッセージや画像を送られたことがあると答えました。また、43%が「興味がない」と伝えたあとも連絡を続けられたことがあると答えました(Pew Research Center, 2023)。

性的な画像を「送る」「求められる」とき

性的な画像やメッセージのやり取りは、大人の間では珍しいことではありません。18〜28歳を対象にした50件の研究をまとめた分析では、送ったことがある人は38.3%、受け取ったことがある人は41.5%でした。その一方で、受け取った画像を、本人の同意なくほかの人に送ったことがある人も15.0%いました(Mori ら, 2020)。

性的な画像やメッセージのやり取り(18〜28歳)送ったことがある38.3%受け取ったことがある41.5%受け取った画像を、本人の同意なく人に送った15.0%
出典:Mori ら(2020)。18〜28歳を対象にした50件の研究をまとめた分析(メタ分析)。

画像は、送った瞬間に自分の手を離れます。仲がよいときには想像しにくくても、別れたあとに公開されたり、おどしの材料に使われたりすることがあります。警察に寄せられた、性的な画像についての相談は、2025年に2,514件で、これまででいちばん多くなりました(警察庁, 2026)。

画像を求められて迷うときは、断ってかまいません。断っただけで怒ったり、しつこく求めたりする相手は、あなたの気持ちを大切にしていません。また、受け取った画像を本人の同意なくほかの人に見せたり広めたりすると、相手を深く傷つけます。そのうえ、犯罪になることもあります。18歳未満の人の性的な画像を持ったり広めたりすることは児童買春・児童ポルノ禁止法で罰せられ、16歳未満の人に性的な画像を送るよう求めることも刑法で罰せられます。

ポルノとの付き合い方 ― 分かっていること、分かっていないこと

ポルノが人にどんな影響をあたえるかは、長いあいだ議論されてきました。けれども、研究者の間でも、結論が分かれているところがあります。

性的な攻撃との関係について、1970年代からの研究をまとめた分析があります。暴力をふくまないポルノと性的な攻撃との間には、つながり(関連)は見られませんでした。暴力的なポルノとの間には、弱いつながりが見られました。ただし、これは「ポルノが攻撃的な気持ちを育てた」のか、「もともと攻撃的な人が暴力的なものを選んだ」のかを、区別できていません(Ferguson & Hartley, 2022)。一方で、つながりがあるとする別のまとめもあり、見方はそろっていません。

性生活の満足度との関係では、41件、約7万人分のデータをまとめた分析があります。ポルノを見ることと満足度の間に、小さなマイナスのつながりが見られました(Abdi ら, 2025)。ただし、男女のどちらでつながりがはっきり出るかは、研究によって結果が逆になっていて、議論が続いています(Wright & Tokunaga, 2025)。

また、「自分はポルノがやめられない(依存している)」と感じる強さは、見る量そのものより、本人の考え方とのずれに強く関係している、という分析もあります。本人が「見ることは悪いことだ」と考えているのに見てしまう、というずれです(Grubbs ら, 2019)。

ポルノは演出された作品で、現実の性や相手の反応の手本にはなりません。見ることに罪悪感を持ちすぎる必要はありません。ただ、「やめたくてもやめられない」「生活や人間関係に困りごとが出ている」状態が続くときは、精神保健福祉センターや専門の医療機関に相談できます。WHOが定める病気の国際的な分類(国際疾病分類)でも、そうした状態は「強迫的性行動症」として扱われています(Kraus ら, 2018)。

AIの話し相手と、どう付き合うか

恋人のように会話してくれるAIや、悩みを聞いてくれるAIも身近になりました。気軽に話せる相手がいることは、さびしいときの支えになることがあります。その一方で、使い方によっては、人とのつながりが細くなることも心配されています。

米国の研究チームは、約1,000人に4週間、AIとの会話を続けてもらう実験をしました。1日に使う時間が長い人ほど、さびしさ(孤独感)や、AIに気持ちの面で頼りすぎること(感情的な依存)が強く、人と会う機会が少ない、という結果でした(Fang ら, 2025)。ただし、この研究は、ほかの専門家のチェック(査読)を受ける前の論文です。期間も短いため、「AIを使うとさびしくなる」とは言い切れません。長い目で見た影響は、まだ分かっていないのが本当のところです。

AIとの会話は、人との関係の「代わり」にするより、「足し算」として楽しむのがおすすめです。使う時間を決める、AIに話したことを信頼できる人にも少し話してみる、といった工夫が役に立ちます。

AIで作られた性的な画像 ― 実在の人に似せるのは人権侵害です

画像などを作るAI(生成AI)を使えば、実在の人の顔写真から、本人が一度も撮られていない性的な画像や動画を作れてしまいます。これは「性的ディープフェイク」と呼ばれ、日本でも被害が問題になっています。国立国会図書館の調査資料は、被害が仲間内で共有されることが多く、表に出にくいことを取り上げています(長谷川, 2026)。

今の法律でも、実在の人を性的に加工した画像を作ったり広めたりすると、罪に問われる可能性があります。たとえば、名誉毀損罪やわいせつ物頒布等罪、実在の子どもが描かれていれば児童買春・児童ポルノ禁止法などです(長谷川, 2026)。また、法務省の検討会が2026年8月に報告書を出しました。実在の人の顔とほかの人の裸を合成した画像をSNSで公開した例について、自分の顔や姿を勝手に使われない権利(肖像権)を侵害したと判断される可能性が高いとしています。そして、損害のつぐない(損害賠償)や投稿の削除を求められることがあること、相手が有名人でなく一般の人でも判断に大きな差はないことも示しました(法務省, 2026)。

実在の人に似せた性的な画像を、本人の同意なく作ること、頼むこと、広めることは、その人の尊厳を深く傷つける行為です。「冗談のつもり」「AIが作っただけ」は通りません。被害にあったときは、警察(📞 #8103)や法務局の「みんなの人権110番」(📞 0570-003-110、平日8時30分〜17時15分)に相談できます。

デジタルの時代でも、変わらないこと

道具がどれだけ新しくなっても、大切なことは変わりません。相手の同意を確かめること、相手を一人の人として大切にすること、そして自分の心と体を守ることです。画面の向こうにも、いつも生きた人がいることを忘れずにいたいものです。

参考にした資料