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同意の文化 ― 「いいよ」を確かめ合うことは、関係を大切にすること

⏱ 読む時間の目安:約6分

性の時間を楽しく、安心できるものにするための土台が「同意」です。同意と聞くと、かた苦しい手続きのように感じる方もいるかもしれません。けれども本当は、相手の気持ちを知りたい、相手を大切にしたい、というごく自然な思いやりの形です。

この回では、まず同意とは何かを整理します。そのあと、2023年に行われた、犯罪と罰を定める法律(刑法)の改正の内容、よくある思い込み、お酒を飲んでいるときや、立場に差があるときの考え方を順に見ていきます。

同意とは何か

性的な同意について、人権を守る活動をしている国際的な民間団体(国際人権NGO)のヒューマンライツ・ナウは、若い世代といっしょに手引き(ハンドブック)を作りました。そこでは、基本として次の4つを挙げています(ヒューマンライツ・ナウ, 2026)。

ここで大切なのは、「嫌と言われなかった」ことは同意ではない、という点です。黙っている、反応がない、前にしたことがある、恋人や夫婦である。こうしたことは、今この場での同意の代わりにはなりません。また、一度「いいよ」と言っても、途中で気持ちが変わるのは自然なことです。そのときは、そこでやめるのが当たり前です。

同意を確かめることは、雰囲気をこわすことではありません。「こうしてもいい?」「痛くない?」「今日はここまでにする?」という短い言葉は、相手への気づかいとして伝わります。断られたときに、気持ちよく受け止めることも、同意の文化の一部です。

2023年の刑法改正 ― 「不同意性交等罪」へ

2023年(令和5年)7月13日から、性犯罪についての刑法の決まりが大きく変わりました。これまでの強制性交等罪などは、同意のない性交を罰する罪(不同意性交等罪)と、同意のないわいせつな行為を罰する罪(不同意わいせつ罪)に改められました(法務省, 2023a)。

ポイントは、「同意しない意思を形成したり、表明したり、全うしたりすることが難しい状態」で性的な行為をすると犯罪になる、とはっきりさせたことです。わかりやすく言うと、「嫌だ」と思うこと、それを伝えること、最後まで貫くことのどれかが難しい状態です。そうした状態になる原因の例として、法務省のリーフレットは「暴行」「脅迫」「障害」「アルコール」「薬物」「フリーズ(固まってしまうこと)」「虐待」「立場による影響力」などを挙げています(法務省, 2023a)。

ほかにも、主に次の点が変わりました(法務省, 2023a;法務省, 2023b)。

法務省は、性犯罪の本質を「自由な意思決定が困難な状態で行われた性的行為」と説明しています(法務省, 2023b)。法律も、「相手がはっきり抵抗したかどうか」より、「相手が自由に選べる状態だったかどうか」を見る方向へ変わったといえます。

「嫌よ嫌よも好きのうち」は誤りです

「本当は嫌がっていない」「断るのは照れているだけ」という言い方は、昔から語られてきました。けれども、相手の「嫌」を「いいよ」と読みかえることは、同意を無視することそのものです。

考え方のずれは、今も残っています。ヒューマンライツ・ナウが2026年6月に、18〜39歳の3,000人に行った調査があります。「性的な行為には常に同意が必要」と答えた人は81.17%でした。その一方で、「明確に拒否・抵抗されない限り、同意していないとは判断しない」と答えた人も17.80%いました(ヒューマンライツ・ナウ, 2026)。また、ホテルに入った、長く付き合っている、といった場面では、「常に同意が必要」と考える人が少なくなる、とも報告されています。

性的な行為と同意についての考え「性的な行為には常に同意が必要」81.17%「明確に拒否・抵抗されない限り、同意していないとは判断しない」17.80%
出典:ヒューマンライツ・ナウ(2026)。18〜39歳の3,000人への調査。

強いこわさを感じたとき、人は声を出せなくなったり、体が固まったりすることがあります。改正された刑法が「フリーズ」を例に入れているのは、そのためです。抵抗しなかったからといって、同意したことにはなりません。

お酒を飲んでいるとき

お酒は、ものごとを判断する力や、気持ちを伝える力を弱めます。米国の大学で起きた性暴力について、研究をまとめた論文があります。それによると、少なくとも半数に、加害者、被害者、またはその両方の飲酒が関わっていました(Abbey, 2002)。

酔って意識がはっきりしない人や、眠っている人は、同意を示すことができません。「お酒の席だったから」「相手も飲んでいたから」は、言い訳になりません。

相手が酔っていて、はっきり受け答えできないときや、眠っているときは、性的な行為をしないでください。おたがいにお酒が抜けているときに、あらためて気持ちを確かめましょう。飲み物に何かを入れられたかもしれないときは、すぐに周りの人や警察に助けを求めてください。

関係性の力の差

上司と部下、先生と生徒、先輩と後輩、仕事をくれる人と受ける人。こうした関係では、「断ったら損をするかもしれない」という不安から、本心と違う返事をしてしまうことがあります。改正された刑法が「立場による影響力」や「経済的・社会的な関係」を原因の例に挙げているのは、この力の差を重く見ているからです。

また、性暴力は、知らない人からだけ受けるものではありません。内閣府の2023年度の調査では、不同意性交等の被害にあった人のうち、加害者が「まったく知らない人」だったのは10.0%だけでした。多かったのは、交際相手、元交際相手、職場の関係者など、知っている相手です(内閣府男女共同参画局, 2024)。親しい間がらだからこそ、断りにくくなることを覚えておきたいものです。

立場が上の側にいるときほど、「相手は本当に断れる状態か」を自分に問いかけましょう。相手が断っても、損をすることは何もない。そのことを、言葉と態度で伝えることが大切です。

ふたりの時間を守るために

同意を確かめ合える関係は、安心して本音を言える関係でもあります。「したい」も「したくない」も、どちらも大切にされる。その積み重ねが、ふたりの時間をより深く、楽しいものにしていきます。

もし、同意のない行為を受けてつらい思いをしているなら、それはあなたのせいではありません。次の窓口に相談できます。

性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター:📞 #8891(通話料無料。最寄りのセンターにつながります。受付時間はセンターにより異なり、時間外は夜間休日コールセンターで受け付けるところもあります)
警察の性犯罪被害相談電話:📞 #8103(通話料無料、24時間)
性暴力に関するSNS相談「Cure time(キュアタイム)」:毎日17時〜21時(https://curetime.jp/)

参考にした資料